エレクトロニクス・フィーバー

プログラミングと電子工作で共有しようと思ったことを載せていきます

Elecom のマウス EX-G M-XG3DLBK を分解してみた

Elecom のマウス EX-G M-XG3DLBK の調子が悪いので、捨てる前に分解してみました。 このマウスはゲーミング用を謳っていて、センサーの位置が人差し指の近くにある、フィット感が良いなど、機械的には良い設計のマウスなのですが、電池持ちが悪いなど電気的には微妙な出来です。 数年我慢して使っていましたが、ついにホイールが逆方向に回りだす不具合が出始めたので、残念ながら捨てることにしました。


すべてのソールを剥がすと、5箇所ネジが隠れているので外します。Y字の特殊ネジ (2.5) ですので専用のドライバーが必要です。

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ネジの位置

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3DプリンターでDIPピン矯正器を作った

この記事は 3DプリンターでDIPピン矯正器を作った | elchika の転載です


DIPパッケージのICは、足が少し広がった状態で売られています。 DIPパッケージ(新日本無線より) しかしこの状態では、基板上のDIPのフットプリント、DIPソケット、ブレッドボードなどに挿入することができないので、少し縮めて真っ直ぐにしてやる必要があります。 指で押したり、ペンチで挟んだり、机の角に押し付けたりと、手でやることもできますが、真っ直ぐにならなかったり、力加減を間違えて曲げすぎてしまいがちです。

専用の工具「サンハヤト ピンそろった」や キャプションを入力できます

HAKKO DIPLINER」という製品もありますが、 キャプションを入力できます 結構なお値段がします。

なので、3Dプリンターで自作してみることにしました。

試作第1号

「ピンそろった」のように挟む構造が使いやすそうですが、部品点数が増えるので設計も製造も面倒、ということで、1ピース構造にできないかと考えました。そこで、溝に差し込んで滑らせることでピンを曲げればいいのでは、と思いつきました。実はこの時は、 HAKKO DIPLINER のことは知りませんでした……。 キャプションを入力できます 試作第1号を作りましたが、残念ながらうまくピンをまっすぐにできませんでした。 1. 溝の横幅を完成品の幅と同じにしたが、ピンの弾性変形により、少し戻ってしまうため真っ直ぐにならない 2. 溝の出口ですぐ外に出る形状にすると、後ろから力がかかった状態で宙に浮いてしまうため、後ろの方のピンが斜めに曲がってしまう

試作第2号

キャプションを入力できます 試作第2号は第1号の反省から、溝の狭まった部分を中央に配置し、押し出した後に遊びとなる空間ができるようにしました。また、溝の幅を完成品より狭く 7.5mm としました。 使ってみたビデオ これはこれでうまくいきましたが、まだ不満点がありました。 1. 押し込むときの摩擦力が強い 2. 真っすぐより少し内向きになってしまう

試作第3号

キャプションを入力できます 試作第2号の問題の原因は、幅が狭すぎることと、最も狭い部分の全長が長過ぎることです。 そこで、幅を 7.6mm とわずかに広げ、最も狭い部分を1点だけとし、また FreeCAD のロフト機能で滑らかにつなぐことにしました。 結果は大成功です。まだちょっと摩擦が強い感じがありますが、使っているうちに金属のピンがPLAを削ってしまうので、これ以上幅を広くするとすぐにユルユルになってしまうでしょう。

ピンが真っ直ぐになるのが気持ちよくなってしまい、気がつくと手持ちのDIPを10個以上突っ込んでしまいました。 この第3号のSTLファイルは thingiverse にアップロードしています。皆さんも是非プリントして使ってみてください。

Aitendo の HV昇圧電源 [DC780DA]

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Aitendo で昇圧電源 DC780DA を買ったのでレポートします。

スペック

  • 価格: 950円(税別)

DC-DC昇圧電源モジュール、入力電圧範囲:2通り、(1)8〜16V、(2)10〜32V、基板ジャンパーで設定できる、出力電圧範囲:単電源、45〜390V、基板精密半固定抵抗で設定できる、最大出力電流:200mA MAX、最大消費電力:40W、動作周波数:75KHz、外形寸法:60x50x22mm、表記価格:1

今回購入したものは、入力電圧: 10-32V のタイプです。

説明に書かれていないこと

  1. 非絶縁DCDCコンバーターです。入力のV-と出力のGNDは同電位です
  2. 単電源ではなく、両電源出力です(つまり、最大±390V出力)。単電源出力のバリエーションもあるようですが、Aitendo では今のところ扱っていないようです
  3. 半固定抵抗のねじと、出力の400V電解コンデンサーの距離が非常に近いので気を付けてください。できれば調整ドライバーを使いましょう

キャプションを入力できます

  1. AliExpress でもほぼ同じものがあります("390V DC-DC"で検索)が、レビューを見るとまれに電解コンデンサーが逆についている不良品があるそうです(電源を入れた瞬間破裂します)。電源を入れる前に、帯の向きが写真の通りであることを確認しましょう

回路

フライバック方式ですが、非絶縁タイプなのでフォトカプラではなく抵抗で直接分圧したものをフィードバックしているのが見てとれます。 PWMインバーターIC1個で制御しているのかと予想しましたが、過電圧を見張るコンパレーターが別にあり、意外と気を使った設計のようです。

回路図は細かいところが違うかもしれませんので参考程度に キャプションを入力できます

主な部品

  • UC3843A SOP8: PWMコントローラー
  • LM393 SOP8: コンパレーター
  • US3M: FRD
  • RU7588R: Ruichips NMOS GDS?
  • H1A (triode): MMBT3904 (Blue Rocket 製?)
  • 431 (triode): SMD の TL431 と思われる

感想

無出力状態ではほとんど発熱しておらず、効率は良さそうです。 両電源出力に対応しており、真空管アンプには最適だと思います。 くれぐれも感電には気を付けてください。

STAX SRM-252S の回路図

この記事は Elchika の記事STAX SRM-252S の回路図 | elchika の転載です。


STAX のイヤースピーカーが不調なため、原因を調べていたのですが、イヤースピーカードライバーの SRM-252S の回路図が、検索しても見つからなかったので書き起こしました。

SRM-252S は半導体式のドライバーで、STAXの据え置き型のイヤースピーカードライバーの中では最も安価なラインナップです。 SRM-252S は現在単品では販売されていません。例えば SRS-3100, SRS-005S MK2 のような、イヤースピーカーとのセットで売られています。私は別のセット品(販売終了)で購入しました。

製品仕様は以下の通りです。

●周波数特性:DC~35kHz/+0, -3dB ●高調波歪率:0.01%以下/1kHz 100V r.m.s. ●増幅度:58dB (800倍) ●定格入力レベル:125mV/100V r.m.s.出力 ●最大出力電圧:280V r.m.s./1kHz ●入力インピーダンス:50kΩ ●入力端子:RCA×1 (パラレルアウト端子) ●バイアス電圧:DC580V ●電源電圧:100V専用ACアダプター付属 ●消費電力:4W ●外形寸法:132(W)×38(H)×132(D)mm (突起部含まず) ●重量:540g ●生産国:日本

本体の底のゴム足(フォーム足)を剥がすと4箇所ネジが出てきて(1箇所は最初から見える)、それを外すとカバーが外せます。分解した様子はこんな感じです。 キャプションを入力できます 別の角度 キャプションを入力できます

電源部分

12VのACDCアダプターから、DCDCコンバーター回路によってアンプとDCバイアス用の高圧を作り出します。 ACアダプターは今時珍しいセンターマイナスのトランス式です。 測ったところ、DCバイアスは約330V、アンプ用の両電源は約210V/-210Vでした。 製品仕様の「バイアス電圧:DC580V」というのがよくわかりませんが、最大電位差 330 - (-210) = 540V のことを言っているのかもしれません。

SRM-252S 電源部分

SG3524N というPWMインバーターICを使用しています。このICの型番で検索しても、メーカーである Texas Instruments のサイト以外はほとんど情報がありませんでしたが、1960年代に開発された電源用ICのようです。現在でも使われているものとしては TL494 と似た役割の製品で、当時はライバル的存在だったらしいです。

DCDCコンバーターでは、出力電圧をフィードバックして電圧を安定化するのが常識で、SG3524 にもそのための基準電圧源や入力端子がついています。しかし驚くべきことに、SRM-252S は電圧フィードバックを全くしていません。おそらく、負荷となるアンプ回路の消費電流が常に一定なので、安定化の必要がないという判断なのかもしれません。

アンプ部分

アンプ部分はもちろんステレオで、回路だけでなく部品番号まで左右同じため左側のみ書きました。

SRM-252S アンプ部分

アンプは、イヤースピーカーの動作原理のため、シングル入力→バランス出力の構成になっています。 2段差動増幅で出力段は定電流駆動したエミッタフォロアです。高電圧がかかる箇所はゲート接地のカスコード接続で、耐圧を稼ぎつつミラー効果を回避する堅実な設計です。 初段のトランジスタは、TO-92パッケージのP型トランジスタのようですが、熱収縮チューブで一体になって熱結合しており、型番はわかりませんでした。もしかするとP型のJ-FETかもしれません。

電圧増幅率は (300k + 380) / 380 ≒ 790 = 58dB と公称通りです。 入力回路にDCカット用のコンデンサーを挟まないDCアンプ構成です。非常に高い電圧増幅率のため、もし入力に少しでもDCが載っていればかわいそうなことになるでしょう。

オーディオ変調テスラコイルキットを解剖する

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AliExpress で購入したテスラコイルキットを作ってみました。 f:id:mtyk1:20200315165632j:plainf:id:mtyk1:20200315171653j:plain

いちばん大変な2次コイルは、既に巻いたものが入っていましたので、基板の通りにはんだ付けするだけで簡単にできてしまいました。 ただ作るだけというのも芸がないので、回路図を起こして動作原理を解剖してみます。

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オーディオ変調テスラコイルキット

BD243で駆動される、回路の下半分は、いわゆる slayer exciter と呼ばれる極めて簡単な自励式発振回路です。 D1はQ2のベース・エミッター間を逆電圧から保護するためにあるので向きが逆なのですが、キットが実際そうなっているので仕方がありません。

オーディオ変調をする仕組みは、乗算回路による振幅変調となっています。いわゆるコレクタ変調です。 80NF70というMOSFETが1個だけという男らしい増幅回路が使われています。おかげでこちらにも放熱フィンが付いています。 オーディオ入力のグラウンドは、回路全体のグラウンドからは浮いていますので、絶縁させなければなりません。間違っても音楽プレーヤーとテスラコイルの電源を共通にしてはいけません。 C1は電解コンデンサーなので極性があるのですが、ここでも向きが逆です。本当に大丈夫なのか心配になってきます。

大体の動作原理は理解できました。頑張れば自分でも作れそうな気がしてきましたね。

Logicool M705 を分解してスイッチを交換した

Logicool のマウス M705 という無線マウスを愛用しています。 最近スイッチがバウンスして、クリックがダブルクリックになる症状が出てきたので、スイッチを交換しました。

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M705 の外観

hb.afl.rakuten.co.jp

まず、前方のソールの内側に2ヶ所と、電池ケースの蓋の下に1ヶ所、ラベルの下に2ヶ所ネジがあるので、#1ドライバーで外します。

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ソールの内側
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電池ケースの中

すると、上部分が外れます。

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上のスイッチとつながっているコネクターを抜きます
スイッチが見えるようになりました。
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HIMAKEという詳細不明のメーカーのスイッチが使用されています
これは OMRON D2F と互換性のあるスイッチです。

スイッチを交換するには、基板を取り外して裏側を出さないといけないのですが、これがまた大変です。 Logicool のマウスは部品交換して修理することなんて考慮していない設計ですね。

まず、センサーから出ているフラットケーブルをコネクターから抜きます。コネクターの黒い部分を上に引っ張ると抜けるようになります。

次に、ホイールを外します。ホイールの根本にある黒い棒を横に引っ張って抜き、ホイールユニットを外します。

最後に電池ケースにつながっているコネクターを抜きます。 f:id:mtyk1:20200111185631j:plain

ホイールユニットを外すと、基板を固定するネジが4ヶ所あるので #00 ドライバーで外します。

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撮影する前に前方のネジ2ヶ所を外してしまった
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やっと基板の裏側が拝めました
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スイッチのハンダを除去します。サンハヤトの「はんだシュッ太郎」を使いました。ふざけた名前ですがめちゃくちゃ便利です
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取り外したオリジナルのスイッチ
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OMRON D2F-01F と交換します。マルツで1個154円(税込)で買いました。Amazon でも売っていますが、大して安くないですし、偽物のリスクもあるのでおすすめしません
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オリジナルのスイッチと OMRON D2F-01F を横に並べてみた

hb.afl.rakuten.co.jp

向きを間違えないように(基板の表側にシルク印刷で方向が書いてあります)挿入し、はんだ付けします。 電池を挿入して正常に認識したら、後は元通りに組み立て直して完了です。

交換後の感触は、ちょっと硬くなった気がしますがすぐに慣れました。快調です。

同じ品種の電解コンデンサの ESR はケースサイズで決まる

例えばぺるけ氏の アルミ電解コンデンサのインピーダンスとESR実測データ ではこのように述べられています。

50V耐圧の通常タイプと16V耐圧の低ESRタイプのESRはほぼ同じです。16V耐圧の低ESRタイプは100V耐圧の通常タイプよりも劣ります。このように、アルミ電解コンデンサでは、耐圧が高いものほどESRが低くなるのです。

しかし、データシートからわかることをより正確に言うと次のようになります。「同じ品種の電解コンデンサの ESR はケースサイズで決まり、ケースサイズが大きほど ESR は小さい。同じケースサイズならば、耐圧が高いほど容量が小さい。同じ容量ならば、耐圧が高いほどケースサイズが大きい」

実際に手元にあった適当な電解コンデンサニチコン KMY のデータシートを見てみましょう。 6.3×11.5mm の特性を抜き出してみると次のようになります。

耐圧 容量 インピーダンス*1 許容リプル電流*2
10 220 0.40 245
16 100 0.40 245
25 100 0.40 245
35 47 0.40 245
50 33 0.40 245
50 47 0.40 245

もう一つ、10×16mm も抜き出してみましょう。

耐圧 容量 インピーダンス 許容リプル電流
10 1000 0.12 765
25 470 0.12 765
35 330 0.12 765
50 220 0.12 765

インピーダンスと許容リプル電流が、「本当に測ったのか?」と思うほど完全に一致していることがおわかりいただけるでしょう。

もちろん、品種による違い、つまり標準品か低インピーダンス品か、アルミ電解か固体電解か、といった違いにも大きく影響を受けることは言うまでもありません。 しかし品種の違いを比較する際には、「同じケースサイズ同士での性能がどう違うか」という観点にも着目しないと、特に高密度実装では足をすくわれる事になります。

*1:Ωmax/20℃, 100kHz

*2:mArms/105℃, 100kHz